パチンコ、パチスロ番組や雑誌などを見ていると、ガチ系ライターが「期待値」という表現をよく使います。
「期待値があるから打とう」「期待値がないから止めよう」など、主に立ち回りの押し引きを判断する基準として用いられますが、果たしてあなたは正しく理解できていますか?
期待値は、立ち回りの押し引きを判断するうえで主軸となる要素であり、勝ち組と負け組を分ける境界線です。“期待値を追う立ち回り”の大切さを理解し、実践できるようになると、途端に勝ち組の仲間入りができます。
期待値(きたいち)とは?
次のようなゲームをしましょう。
- サイコロを振って相手より大きい目を出したらあなたの勝ち
- サイコロを降るのはそれぞれ1回のみ
- 同じ目の場合は先行の勝ち
要は、より大きな目を出したほうが勝ちという単純なゲームです。実際にやったことがある人も多いと思いますが、このルールで行った場合に「勝率50%」だと思っているようなら要注意。
Q.Aが振ったサイコロの目が1だった場合、Bが勝つ確率は何%か?
Bの出目 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||
Aの出目 | 1 | ✘ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
2 | ✘ | ✘ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
3 | ✘ | ✘ | ✘ | ○ | ○ | ○ | |
4 | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ○ | ○ | |
5 | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ○ | |
6 | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ |
Aの出目が1だった場合、Bが勝てるのは1以外のすべて(5/6)となり、勝率は約83.3%
Q2.Aの出目が2だった場合は?
Bが勝てるのは3,4,5,6の4つ、4/6で勝てるので勝率は約66.6%
Q3.同じようにAの出目が3,4,5,6だった場合は?
- Aの出目が3だった場合、Bが勝てるのは4,5,6の3つ(3/6)となり、勝率は約50%
- Aの出目が4だった場合、Bが勝てるのは5,6の2つ(2/6)となり、勝率は約33.3%
- Aの出目が5だった場合、Bが勝てるのは6だけ(1/6)となり、勝率は約16.6%
- Aの出目が6だった場合、Bが勝てる出目はない(0/6)ため、勝率は0%
Aの目が1だった場合、1さえ出さなければ勝てる状況なので積極的に勝負したい状況です。Aの目が2だった場合も同様に、3回中2回勝てる状況なので勝負したいところ。
ところが、Aの目が3以上になると勝率は半分以下。良くて五分五分、最悪の場合は必ず負ける状況になるため勝負しないほうが賢明です。
Bの出目 | 勝率 | 勝負する/しない | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||||
Aの出目 | 1 | ✘ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 83.3% | すべき |
2 | ✘ | ✘ | ○ | ○ | ○ | ○ | 66.6% | すべき | |
3 | ✘ | ✘ | ✘ | ○ | ○ | ○ | 50.0% | してもよい | |
4 | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ○ | ○ | 33.3% | しないほうがよい | |
5 | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ○ | 16.6% | しない | |
6 | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | ✘ | 0% | 絶対にしない |
勝率50%をどう捉えるのかもポイントですが、上表で勝負すべき状況といえるのはAの目が1か2だったときだけです。3以上の目が出た場合は勝てる見込みが少ないため勝負を避けるべきですが、ルール説明の時点でこの状況に気づけるかどうかが大きな違いを生みます。
ルール説明の時点で勝率50%だと思った人は、要するに「1~3は勝ち、4~6は負け」という感じで勝敗を捉えてしまっていたのでしょう。ひどく乱暴な言い方をすればそうかも知れませんが、上表のように実際の勝率を計算してみると間違いだとわかります。
今回は「引き分けがない」としたことがポイント。
引き分け=Aの勝ち、とAが有利な条件だったからこそ上表の結果になるわけです、もしも引き分けがあれば勝率は完全に50%です。
誰もが簡単にイメージできるゲームかつ「勝敗は半々」という先入観があることにより、実際の勝率を勘違いしてしまった人は、現実のギャンブルにおいても同じような状況の判断を間違えてしまっている可能性があります。
「このゲームの勝率が80%以上あるから勝負しよう」「勝てる見込みが1/4以下だからやめよう」という具合で、勝敗を客観的に考える指標の1つが期待値という考え方です。
このゲームの(勝利)期待値は約42%しかない
今回のルールにおいて、Bが勝てる組み合わせは36通りあるうちの15通りだけ。残りの21通り(21/36)は負けてしまうため、勝率は約41.6%(15/36)しかありません。
1回勝負なら勝てる可能性はあります。場合によっては、5連続、10連続で勝てることもあるでしょう。しかし、勝利期待度は42%、理論上は5回中3回負けることになり、10回、100回、1000回と勝負を繰り返すほどに勝てる見込みがなくなっていきます。
「サイコロを使うなら勝率は50%だ」と思い込んでいると、気づかないうちに負ける勝負をはじめてしまうことは珍しくありません。現実的な勝率をもって客観的に判断し、負けるリスクを最小限に抑えることがギャンブルで勝つ鉄則です。
パチンコ、パチスロの期待値
パチンコ、パチスロにおける期待値の考え方は「設定」と「ボーダー」をメインに「状態」を加味して考えます。
ボーダーはパチンコ、設定はパチスロのメイン要素であり、状態はどちらにも関係する可能性がありますが主にパチスロです。
ボーダー
理論上、収支が±0になる1000円あたりの回転数がボーダーです。大当たり確率、平均連チャン数および期待出玉などの要素をもとに計算します。
もし、次のような台があった場合のボーダーを見てみましょう。
大当たり確率 | 1/100 | 100回に1回大当たりすると“仮定”する |
---|---|---|
大当たり出玉 | 500個 | 大当たり1回あたりの平均的な獲得出玉 (賞球×カウント数×ラウンド数)> |
確変突入/継続率 | 50% | 平均2連チャンすると“仮定”する |
必ず100回転で大当たりして500個×2連チャン、1000個の出玉が獲得できると仮定し、この1000個で次回大当たり(100回転)を迎えられるかどうかがポイントです。
使った玉数 | 収支 | 期待値 |
---|---|---|
999個以下 | プラス | 期待値プラス |
1000個 | ±0 | ボーダー |
1001個以上 | マイナス | 期待値マイナス |
次回大当たりまでに1個でも残っていれば、それ以降も大当たりするごとに1個ずつ増えていくため期待値は1個プラス。逆に1個足りず1001個かかった場合、それ以降も1個ずつ減っていくため期待値は1個マイナス。過不足なくちょうど1000個で大当たりした場合が収支±0、ボーダーです。
個数のままだと分かりづらいので、もっと分かりやすくしましょう。
1000個は等価換算で4000円なので、ボーダーは4000円あたり100回転。つまり、1000円あたり25回転がボーダーとなり、24回転以下ならマイナス収支、26回転以上ならプラス収支が期待できます。
1000円あたりの回転数 | 4000円時点の回転数 | ボーダーとの差 | 期待収支 |
---|---|---|---|
24回以下 | 96回転 | -4回 | -16円 |
25回 | 100回転 | ― | ― |
26回以上 | 104回転 | +4回 | +16円 |
実際のホールでは回転数のムラ、大当たり出玉のムラ、電サポ中の増減や換金ギャップなども加味してボーダーを計算する必要があるため少々面倒です。
設定
パチンコと比べると、パチスロの期待値は簡単です。というのも、パチンコは釘の状態や打ち方など複数の要素が回転数を左右しますが、パチスロの場合は1つしかありません。パチスロは設定ごとにあらかじめ出玉率(機械割)が決まっているため、100%を超える機械割の台を打てるかどうかかカギを握ります。
設定 | BB確率 | RB確率 | 合算 | 機械割 |
---|---|---|---|---|
1 | 1/273.1 | 1/439.8 | 1/168.5 | 97.0% |
2 | 1/269.7 | 1/399.6 | 1/161.0 | 98.0% |
3 | 1/269.7 | 1/331.0 | 1/148.6 | 99.5% |
4 | 1/259.0 | 1/315.1 | 1/128.5 | 101.1% |
5 | 1/259.0 | 1/255.0 | 1/128.5 | 103.3% |
6 | 1/255.0 | 1/255.0 | 1/127.5 | 105.5% |
5号機以降のパチスロを牽引してきたジャグラーシリーズを例に挙げますが、上表で注目して欲しいのは「機械割」です。
機械割とは、あらかじめプログラムされた仕様上、期待できる出玉を表しています。正しくは違いますが、イメージとしては次のような感じです。
- 設定1(97.0%)は1000円使ったときに970円返ってくる
- 設定6(105.5%)は1000円使ったときに1055円返ってくる
機械割が100%を超えていれば期待値プラス、100%未満なら期待値マイナスとなり、パチンコのようなボーダーは存在しません。期待値は常にプラスかマイナスかしかなく、低設定=期待値マイナス、高設定=期待値プラスというのが基本的な仕様です。
状態
状態については広く共通する表現ではないかもしれません。しかし、実際にホールで期待値を考える場合には考慮しなければいけない付加要素がたくさんあるため、覚えておいて損はないでしょう。
パチンコ | パチスロ |
---|---|
|
|
パチンコ、パチスロそれぞれのすべての機種に該当するわけではありませんが、知っていたからこそ拾えるお宝台に巡り会える可能性があります。
とくにパチスロにおいて、天井や回転数によるチャンスゾーンの存在は知識がなければ逃してしまう可能性が高く、恩恵も強力なため立ち回りの手段として確立しているほどです。パチンコはあまりチャンスが多くはないかもしれませんが、もしも朝イチ潜伏確変台に座れたら少投資で大勝も充分に狙えます。
パチンコ、パチスロに限らずギャンブルで勝ちたいなら期待値は必須
以上、今回はパチンコ、パチスロにおける期待値について紹介しました。
オカルト肯定派や期待値否定派もいますが、個人的にパチンコ、パチスロで安定して長期的に勝ちたいなら期待値の知識は必須だと思います。何のバックボーンもなく、感覚だけで勝てている人も世の中にはいるかも知れませんが、そういう人はおそらく経験則などをもとに無意識で期待値を追っているのではないでしょうか。
現に、プロギャンブラーが何を根拠に巨万の富を築いているのかといわれれば期待値にほかなりません。
パチンコ、パチスロは負けて当然だと思っている人がほとんどでしょう。しかし、実際にプロとして生活を成している人もいますし、私自身も10年以上年間収支はプラスを維持し、年間100万円を超えたこともあります。2020年の今とは状況が違うので一概には比較できませんが、週1回打てるかどうかという状況でもプラス収支を出し続けられたのは、理論的に立ち回った結果にほかなりません。
現時点で勝てている人はプラスをさらに増やすため、負けている人はプラス収支へ転換するためにも正しい立ち回りをしましょう。
コメント